会長ご挨拶

  2024年4月1日

 

   会長就任にあたって    

                                                                                               日本鉱業協会

                                                           会長 関口 明

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 この度、会員各社のご推挙により、野崎会長の後を受けて、日本鉱業協会の会長に就任することとなりましたDOWAホールディングスの関口でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 当協会は、1948年に設立され、本年4月をもって77年目となります。この間、歴代会長、会員各社ならびに協会関係者のご尽力により、当業界の振興・発展を実現してこられましたことに改めて深く敬意を表したいと存じます。また、経済産業省をはじめ、関係省庁、地方自治体、ならびに労働団体などの皆様からのご支援に対しまして、改めて心より感謝申し上げます。

 野崎前会長は、安定的な金属資源確保、低廉・安定的な電力供給の確保そしてリサイクル事業環境の整備が現在および将来の国益にかなうとの信念のもと、様々な施策にご尽力されました。

 安定的な金属資源確保については、経済安全保障の観点からもその重要性が増している状況下で鉱物資源獲得競争が激化しているため、その支援強化を政府や関係機関に訴えられました。特に2023年度は、鉱業2税制(減耗控除制度および海外投資等損失準備金制度)のうち、「海投損」が適用期限を迎えましたが、経済産業省・資源エネルギー庁や財務省および国会議員の方々に多大なるご理解を賜り、適用期限が2 年延長となりました。

 電力価格に関しては、ロシアによるウクライナ侵攻直後から見れば若干落ち着きを見せましたが、高止まりの状況を踏まえ、安全が確認された原子力発電所の再稼働を含むベースロード電源の早期確保など、低廉で安定的な電力供給に向けて強く要望されました。

 またリサイクル事業環境整備に関しては、国際ルールの整備、リチウムイオンバッテリー(LiB)リサイクルへの支援を求める活動を推進されました。

 このような前会長のご努力に対し深く感謝申し上げますとともに、私もこれまで進められてきた基本路線を引き継ぎながら、課題解決に向けて精一杯努力してまいりたいと存じます。

 さて、昨年までの日本経済は失われた30年と表される場面があったものの、年明け2 22日の日経平均株価は34年ぶりに史上最高値を更新し、3月に入りましても4万円を超える日があるなど勢いを見せております。319日の日銀金融政策決定会合においてはマイナス金利の解除が決定されるなど、今後も我が国の社会経済活動が益々上向いていくことを期待しております。また、グリーントランスフォーメーション(GX)、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に向けた国内投資が活発化し、様々な産業で必要とされる素材の国内需要の増加が見込まれるなか、当業界の使命である非鉄金属素材の安定供給確保は、一層重要性を増していくものと考えられます。

 一方、長期化するロシアによるウクライナ侵攻や11月に予定されている米国大統領選挙、各国中央銀行によるインフレ動向に応じた金融政策の調整など、世界経済の先行きを見通すことは容易ではありません。また、資源ナショナリズムの高まりは海外鉱山の権益取得を困難なものとし、円安や中東情勢緊迫化に伴う原油高によるエネルギーコストの高騰は製造コストを圧迫するなど、当業界を取り巻く環境は厳しい状況が続いております。

 このような環境下にあって、当業界としては、非鉄金属素材の安定供給と循環型社会の構築を通じて、我が国の持続可能な発展に貢献するべく、以下に掲げる重要課題を中心に取り組んでまいりたいと考えております。

 第一の課題は「資源の安定確保」です。

 非鉄金属は、広く日本の産業全般にて必要不可欠な素材として用いられ、グリーントランスフォーメーション(GX)推進に向けた需要増加が見込まれている一方、有望な天然の鉱床は限られております。加えて、チリ、インドネシア、フィリピンなど資源国における課税強化や禁輸政策といった資源ナショナリズムの高まりにより、鉱物資源確保における競争は激しさを増しております。また昨年中国ではガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)といった電子材料として不可欠な金属に対する輸出規制が導入され、市場での供給不安が意識されました。こうした点を鑑みても、当業界の使命である金属資源の安定確保、素材の安定供給はその難しさと重要性を増していると認識しております。また、鉱山事業に関しては、その立地の深部化・奥地化による初期投資額の増大やインフレにより、新たな開発・経営への参入はさらに多額の資金を必要とし、大きなリスクを伴う事業となっていること、電子材料向け素材の確保についてはその資源の偏在により中・長期的な戦略が求められております。

 こうした状況を踏まえ、当協会では、長期的な視点で積極的な海外資源開発が継続できるよう、引き続き独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)、国際協力銀行(JBIC)、日本貿易保険(NEXI)等の政府系機関の機能強化・拡充や、減耗控除制度・海外投資等損失準備金制度(海投損)の恒久化・拡充など、政府に対して一層の支援強化を訴えてまいりたいと考えております。とりわけ2024年度末に適用期限を迎える減耗控除制度については、その維持・拡充を強くお願いしたいと考えております。並行して、資源外交についても、政府と一体となって積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

 第二の課題は「電力問題」です。

 当業界では、非鉄金属という国際商品を扱っている以上、常に国際競争に晒されており、国際的に劣後しない価格水準での、安定的な電力の確保が必要不可欠となっています。しかし、すでに2年が経過したロシアによるウクライナ侵攻やベースロード電源とされている電力供給源の進捗の遅れにより我が国の電気料金は高止まりしており、電力多消費型産業である非鉄金属製錬にとって大きな負担となっております。またこの点は循環型社会に必要なリサイクル拠点でもある製錬所の国際競争力が削がれていることも意味します。当業界としては、引き続き省エネ活動を推進してまいりますが、FIT制度(2022年度よりFIP)の減免措置維持・拡充、安全性の確保を前提とした原子力の活用、地熱発電拡大のための規制緩和等の支援、再生可能エネルギー供給量の拡大への取組強化について今後とも政府に働きかけてまいります。

 第三の課題は「リサイクルによる持続的な循環型社会の構築」です。

 当業界は長年にわたる製錬技術の蓄積によって既存インフラを有効活用し、様々な産業で発生したスクラップのリサイクルを積極的に実施するとともに、産業廃棄物の無害化を行うことで、循環型社会の構築と環境負荷の低減に取り組んでまいりました。この活動は経済安全保障の観点からも非常に重要な意義を有していると認識しております。

 天然の鉱山に勝るとも劣らない都市鉱山と呼ばれる資源の活用は重要な使命であり、社会の電動化に欠かせないリチウムイオンバッテリー(LiB)や太陽光発電パネルのリサイクルは社会的要請が日々高まっていると認識しております。当業界の技術や設備と製錬所間のネットワーク、リサイクル原料の処理促進や技術開発は確実に成果を上げており、すでに会員各社においては第三者機関の認証によるリサイクル金属の上市やカーボンフットプリントの算定・低減への取り組みを始めるなどリサイクル原料の再資源化や脱炭素を目指すサーキュラーエコノミーの構築に貢献しており、さらにその歩みを進めてまいります。その目的のためにも、リサイクルの拠点整備やネットワークづくりの支援、産業廃棄物の収集から処分に至るまでの、現行制度の実態に即した改善・整備などを引き続きお願いしていく所存です。

 また、グリーントランスフォーメーション(GX)促進のため、会員各社が策定したCO₂削減目標の実現を支援してまいるとともに、当協会内における活動を継続してまいりたいと考えております。

 第四の課題は「人材確保と育成の強化」です。

 経済安全保障の観点からも高まっている非鉄金属素材へのニーズに対し、我が国における人口減少・少子化に加え、大学・大学院における冶金・鉱山関係カリキュラムの廃止が進み、中堅教員層が減少するなど産業を牽引する人材不足が顕在化しております。これらに対して、大学への寄付講座、共同研究/研究助成などを通じた産学の一層の連携の強化、経団連、経済広報センターが主催する「企業人派遣講座」への講師派遣、科学技術館において「カーボン・ハンター」と銘打った当業界のカーボンニュートラルへの取り組みをご理解いただくための常設展示、さらには人材確保の観点からも重要な、女性がより活躍できる労働環境を目指す業界横断的なフォーラムの開催といった活動を通じて、引き続き若い世代への訴求を促進してまいる所存です。また、資源・素材学会を通じた研究費の助成についても、業界として引き続き積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

 人口動態や教育の在り方への対応は個別企業や業界レベルでは限界がありますため、産学官連携による具体策のデザインと、国や関係機関による支援策の整備と拡充を引き続き要望してまいります。

 このほか、安全対策の推進、休廃止鉱山管理を含む環境・保安対策の充実など非常に重要な課題であり、引き続き適切に取り組んでまいります。

 これから1 年間、会員各社のご理解とご協力をいただいて、これらの諸問題に全力をあげて取り組んでまいる所存ですので、関係各位のご指導とご支援を重ねてお願い申し上げて、私の就任のご挨拶とさせていただきます。

                                                                                                                          以上

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