会長ご挨拶

 

小野直樹会長.jpg                             平成31年4月1日

 

        会長就任にあたって

                        日本鉱業協会       
                             会長 小野 直樹
 

 
 
 この度、会員各社のご推挙により、関口会長の後を受けて、日本鉱業協会 会長に就任することとなりました三菱マテリアルの小野でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 

 当協会は、昭和23年に設立され、本年をもって72年目となります。この間、歴代会長、会員各社ならびに協会関係者のご尽力により、当業界の振興・発展を実現してこられましたことに改めて深く敬意を表したいと存じます。また、経済産業省をはじめ、関係省庁、地方自治体、ならびに労働団体などの皆様からのご支援に対しまして、改めて心より感謝申し上げる次第でございます。

 

 関口前会長は、当業界が長期的に安定した発展を遂げるための諸施策に取り組まれました。特に、政府から租税特別措置法は原則廃止との方針が強力に打ち出されている中、精力的に関係各所をめぐり鉱業税制の重要性をご理解いただくことに注力され、減耗控除制度の延長を実現されました。

 また品質に関して、会員各社のお客様が、安心して使用できる製品を提供するための、品質保証に係るガイドラインを設定し、業界全体の品質に関わる意識を高めることに多大なご努力をなされました。

 このような前会長のご努力に対しまして、深く感謝申し上げますとともに、私もこれまで推進されてきました基本路線を引き継ぎながら、課題解決に向けて精一杯努力をしてまいりたいと存じます。

 

 さて、これまで我が国経済は、雇用・所得環境の改善が続く中で、緩やかに回復してきました。しかし世界に目を転じますと、中国、欧州などで景気減速感が強まっているほか、IT需要の調整局面が続くとみられています。こうした世界経済の緩やかな減速を背景とした輸出の伸び悩みや、米中通商問題の動向、英国のEU離脱などの不確実性、中東・北朝鮮における地政学的緊張・リスクの高まりなどがあるほか、国内においては10月からの消費税増税による消費や人手不足に伴う生産の停滞懸念があり、先行きに大きな不安定要素を抱えております。こうした中においても、当業界が長年にわたり培ってきた技術と経験を十分に活かし、非鉄金属素材の安定供給を通じた豊かな社会の構築と、持続可能な循環型社会の構築という社会的使命を果たしながら、我が国の発展に貢献するべく、今年度は引き続き、以下の課題を中心に取り組んでまいりたいと考えております。

 

 第一の課題は「資源の安定確保」です。

 非鉄金属素材は、社会のインフラから電子部品、精密機械、自動車など数多くの分野で使用され、わが国の幅広い産業で必要不可欠なものとなっています。従って日本経済の持続的発展と、豊かな社会の実現のためには、その長期的・安定的な資源の確保は重要な課題であると考えます。

 しかしながら、近年はインドネシアに代表される資源ナショナリズムの高まりや、資源メジャーの合併による寡占化などで供給側の力が増す一方、需要側では中国等の新興消費大国で製錬所が新設・増強され、国策的な資源獲得戦略が成されていることなどから、競争が激化しています。加えて投資コストが安価な鉱山の開発は既にある程度実現されており、今後は鉱山の深部化・高度化・奥地化・低品位化が顕著となり、開発に必要な資金と時間は年々増大していくものと思われます。本邦企業による海外資源開発を取り巻く環境は厳しさを増し、ひるがえって長期的・安定的な資源の確保がますます困難になりつつある状況です。

 当業界は、このような環境のもとにおいても、わが国の安定的な資源確保に向けて長期的な視点に立ち、積極的な海外資源開発が継続できるよう、引き続き独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)、国際協力銀行(JBIC)、日本貿易保険(NEXI)などの政府系機関の機能強化・拡充など、一層の支援強化を訴えてまいりたいと考えております。

 また、税制においては、海外投資等損失準備金制度、金属鉱業等鉱害防止準備金制度の2つが本年度末に期限を迎えます。資源の安定確保の観点から、これらの関連税制の恒久化・拡充を、強く求めてまいりたいと考えております。

 さらに、資源外交についても、当業界として積極的に協力してまいります。

 

 第二の課題は「電力問題」です。

 当業界は、長年に亘り省エネルギー活動に向けた不断の努力を継続し、電力使用量は、ピークとなる平成25年度から徐々に下がっています。しかし、安全性確保を大前提とした原発再稼働はスムーズに進んでいるとは言い難く、またFIT制度(フィット:再生可能エネルギー固定価格買取り制度)において、年々増大する賦課金の負担の影響は極めて大きく、電力料金は高止まりを続けています。このままでは熾烈な国際競争に挑む当業界の競争力を著しく阻害し、国内存続の危機に瀕することとなります。わが国ものづくりの基盤である非鉄金属素材の安定供給や、循環型社会の構築といった当業界の社会的使命を果たしていく上において、国際的に遜色のない価格水準での安定的な電力供給は極めて重要です。このために安全規制基準に適合した原発の早期稼働や、FIT賦課金の減免措置の維持・拡大、省エネ補助施策の継続などを通じ、電気料金の影響緩和と安定的な電力供給のための諸施策をお願いしたいと存じます。

 

 第三の課題は「リサイクルによる持続的な循環型社会の構築」です。

 当業界は長年にわたり、使用済み製品から非鉄金属のリサイクルを行ってきましたが、近年はシュレッダーダストや焼却灰等の産業廃棄物の無害化や、廃電気・電子屑のリサイクルにも拡大し、持続的な循環型社会推進の担い手として、社会に多大な貢献をしています。また、こうしたリサイクルは、国内のみならず海外で発生する使用済み製品においても、わが国が有する効率的な有価金属の回収技術や高度な環境保全技術により、ますます重要な役割を果たしております。

 一方で鉛蓄電池や小型家電など有価金属を含む使用済み製品の海外流出や、EUと比して煩雑なバーゼル手続きに起因する廃電気・電子屑輸入時の買い負けなどの機会損失がみられたことから、平成29年度の使用済み鉛蓄電池輸出時の審査厳格化を目的とした省令改正や、平成30年度の改正バーゼル法の施行に、当協会は行政と連動して取り組んでまいりました。

 今後も国や自治体と連携し、日本国内における鉛製錬、亜鉛製錬、銅製錬から成る再資源化ネットワークが維持・拡大され、より適正なリサイクルシステムの整備・構築に、これまで以上に取り組んでいきたいと考えております。

 

 第四の課題は「人材確保と育成の強化」です。

 当業界は、国内鉱山の相次ぐ閉山と、それに伴う大学などでの資源関連カリキュラム減少などがあり、グローバルに活躍できる資源開発分野での人材不足が顕在化しています。また大きく環境変化する市場で持続的な発展を遂げるためには、継続的な生産コストの引き下げや、時代の変化に対応した製錬技術、環境保全・公害防止技術の開発、リサイクル技術、高度な新材料技術などの開発を積極的に進める必要があり、製錬分野の人材育成も重要です。

 近年、一般財団国際資源開発研修センターの発足に伴う人材育成事業の拡充、秋田大学、高知大学において資源系教育が可能な学部の設置、JOGMECの地熱資源開発研修の開始、科学技術館に小中学生を対象とした非鉄業界をPRする「Metal Factory」の開設、など産学官連携による人材確保、育成強化に取り組んでまいりました。

 さらに平成30年度より、経団連の下部組織である経済広報センターが主催している「企業人派遣講座」に、当協会として参加を開始いたしました。大学の講座に会員企業より講師を派遣し、当業界のPRをはじめ、各社の事業紹介をおこない、理解と認知度を高める取組みを行なっております。

 しかしながら、近年の中堅教員層の減少、資源・製錬分野への学生の関心の低下、くわえて少子化による学生そのものの減少と、人材育成と確保をめぐる状況は依然として深刻な状況にあります。

 次世代を担う人材確保と育成の強化につき、国や関係機関による支援もお願いし、さらなる努力を進めてまいりたいと考えております。

 

 このほか、安全への取組み、低炭素社会実行計画への取組み、地熱エネルギーなどの国内資源の開発促進、鉛・亜鉛等の特性を活かした新たな需要分野の開拓、ならびにスラグ等副産品の用途拡大、環境・保安対策の充実などにつきましても、引き続き取り組んでまいりたいと思います。

 

 これから1年間、会員各社のご理解とご協力をいただいて、これらの諸問題に全力をあげて取り組んでまいる所存ですので、関係各位のご指導とご支援を重ねてお願い申し上げて、私の就任のご挨拶とさせていただきます。
                                               以上                                        


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